はじめに:調査の背景
キャリアフライジャパンでは、日本での就業を希望する外国籍人材を対象に、仕事探しに関する意識調査を実施しました(回答数:51名)。労働人口の減少に伴い、外国籍人材の採用は今や「選択肢」ではなく「必須」となりつつあります。しかし、採用を成功させるためには、彼らが日本企業に対してどのような魅力を感じ、どのような不安を抱いているのか、リアルな声を理解することが不可欠です。
本調査における考察について
外国籍人材から見た日本企業は「圧倒的な信頼ブランド(品質・規律・安定)」を誇る一方で、「現代的なスピード感や柔軟性」において大きな課題を抱えているという結果が見えてきました。
- 「日本ブランド」の強固な求心力
回答者の多くが自国よりも日本での就職に魅力を感じ、5年以上の長期キャリアを視野に入れています 。これは、単なる給与水準だけでなく、日本企業が培ってきた「改善(Kaizen)」「チームワーク」「終身雇用の安定感」が、グローバル市場で依然として非常に高い価値を持っていることを示しています。 - 「品質の源泉」が「スピードの足かせ」になる矛盾
日本企業の強みである「丁寧さ」や「慎重なプロセス」が、採用や意思決定の場面では「遅すぎる」という不満に直結しています。 - 「日本語力」から「スキル・成果」への評価軸の転換
多くの回答者が、「日本語能力よりも専門スキルや技術力を重視してほしい」と切実なリクエストを寄せています。 - 「和」の概念のアップデート:多様性と対話
「チーム重視」の文化は魅力として挙げられる一方で、「年功序列」や「閉鎖的なコミュニケーション」への懸念も散見されます。
日本企業が今後さらにグローバル人材を惹きつけるためには、「日本流の規律と品質」という土台の上に、「グローバル基準のスピードと柔軟性」をアドオン(上書きではなく追加)することが、最も効果的な戦略であると結論づけられる調査フィードバックでした。
以下に、調査項目と結果について共有します。*9問必須回答、3問自由記述









What do you find most attractive about working for a Japanese company?
日本の会社のここが魅力的だ!ということを簡潔にお答えください。*自由記述
- 妥協のない「品質」と「改善(Kaizen)」
日本独自の「細部へのこだわり」と「日々向上しようとする姿勢」を最大の魅力。
・世界最高峰の品質管理とエンジニアリング。
・「Kaizen」という言葉に象徴される、継続的な改善のプロセスを学べる。 - 「個」よりも「和」を尊ぶチーム文化
個人のスタンドプレーよりも、「チーム全員で目標を達成する」スタイルが安心感と一体感がある。
・協力し合い、教え合う風土。
・礼儀正しく、お互いを尊重し合う高いプロ意識。 - 規律(ディシプリン)と誠実さ
「時間を守る」「ルールを遵守する」といった仕事に対する規律正しさが、信頼できる職場環境を作っている。
・体系化されたプロセスによる、曖昧さのない業務遂行。
・誠実で丁寧なカスタマーサービスや対人関係。 - 長期的なキャリアの安定性
短期的な利益だけでなく、「社員を長く雇用し、育てる」という長期的なビジョンが評価されている。
・雇用の安定感(終身雇用的な安心感)と充実した研修制度。
・最先端技術(ロボティクス、自動化など)にじっくり腰を据えて取り組める環境。
What aspects of Japanese companies do you think should be improved?
反面、ここは改善した方が良いということを簡潔にお答えください。*自由記述
- ワークライフバランスと柔軟性
労働時間と働き方の柔軟性が少ない。
・長時間労働の是正: 残業文化や休暇の取りにくさを改善し、プライベートを尊重する環境作り。
・柔軟な働き方: リモートワークや勤務時間の柔軟な調整など、個々の生活に合わせたスタイルの導入。 - 意思決定のスピードとアジリティ
慎重すぎるプロセスが、グローバル競争における足かせになっている。
・迅速な決断: 合意形成(根回し)に時間をかけすぎず、変化の速い市場に対応するスピード感。
・前例主義からの脱却: 「新しいアイデア」よりも「過去の事例」を重視する保守的な姿勢の改善。 - 多様性の受け入れとグローバル化
外国籍人材の視点から、言語や採用の壁が存在する。
・言語の壁とコミュニケーション: 日本語能力を重視しすぎる採用基準の緩和や、社内英語化の推進。
・インクルージョンの促進: 外国人と日本人の待遇差(派遣・正社員など)の解消や、多様なバックグラウンドを持つ人材の登用。 - コミュニケーションの透明性とフラットな組織
階層意識(ヒエラルキー)による弊害がある。
・上下間のオープンな対話: 若手や現場の意見が上層部に届きやすい、風通しの良い組織作り。
・率直なフィードバック: 遠回しな表現ではなく、より直接的で建設的なフィードバック(評価)の実施。
If you could request one thing from Japanese companies, what would it be?
日本の会社に求めることがあれば教えてください。*自由記述
- 言語の壁を越えた「スキル重視」の評価
語学力(日本語能力)以上に、技術力や専門性を正当に評価してほしい。
・採用基準の緩和: JLPT(日本語能力試験)の級や学位の有無だけで判断せず、実務経験やIT・エンジニアリングのスキルを優先して評価すること。
・英語での選考・業務: 入社初期は英語で働ける環境の整備や、日本人社員側の英語力向上。 - 外国人社員に配慮した「休暇と柔軟性」
日本特有の働き方だけでなく、グローバルなライフスタイルへの理解が欲しい。
・長期休暇の許容: 母国への帰省(一時帰国)のために、1ヶ月程度のまとまった休暇を取得しやすくすること。
・柔軟な働き方: リモートワークの選択肢や、クリスマス休暇、残業のない環境の提供。 - 採用プロセスの透明化と門戸拡大
日本国外からの直接採用や、多様なバックグラウンドを持つ人材への機会提供を求める。
・ダイレクトな採用窓口: 仲介業者を通さず、企業の魅力や採用情報を直接発信するポータルの充実。
・年齢・経歴の不問: 40歳以上のベテランや、学位はないが高スキルを持つ人材にも平等にチャンスを与えること。 - 「Speak-up(意見を言う)」文化の醸成
伝統的な階層構造を越えて、誰もが自由にアイデアを出し合える環境への期待。
・上下間のオープンな対話: 若手や外国人が意見を言いやすく、それを受け入れるフラットな組織作り。
・公平な待遇: 日本人と外国人の区別なく、成果に基づいた昇給や昇進(スキルベースの給与体系)の実現。
調査結果の詳細と考察
① 長期的なキャリア形成への強い意欲
結果: 回答者の約94%(52名中49名)が「日本で5年以上、長期的にキャリアを築く予定である」と回答しました 。
考察: 外国籍人材は「一時的な出稼ぎ」ではなく、日本を「生活とキャリアの拠点」として捉えています。企業側は、単発の労働力としてではなく、長期的な成長を支えるパートナーとして迎えるマインドセットが求められます。
② 給与よりも「ワークライフバランス」を優先
結果: 約86%が、年収よりも「ワークライフバランス(残業の少なさ、休日数)」を優先すると回答しました 。
考察: 給与水準の向上も重要ですが、それ以上に「持続可能な働き方」が重視されています。残業時間の削減や有休の取りやすさを可視化することは、採用ブランディングにおいて非常に強力な武器になります。
③ 伝統的企業でも「キャリアパス」があれば応募対象に
結果: 約90%が、たとえ伝統的な日本企業であっても「明確なキャリアパス」があれば応募を検討すると回答しています 。
考察: 「古い体質の企業だから敬遠される」と諦める必要はありません。重要なのは、入社後にどのようなステップで成長できるのか、具体的な道筋を明示することです。
④ 日本語能力以上に「スキル」の正当な評価を求めている
結果: 多くの回答者が「日本語能力だけでなく、技術やプロフェッショナルなスキルをもっと重視してほしい」と回答しています 。
考察: 言語はコミュニケーションの手段であり、業務遂行能力そのものではありません。特にITエンジニアなどの専門職においては、日本語能力のハードルを一段下げ、スキルで評価する姿勢を見せることで、優秀な層にリーチできる可能性が高まります。
⑤ 課題は「選考スピード」と「評価の透明性」
結果: 選考プロセスが「遅すぎる」と感じている層や、評価制度が「不透明である」と感じている層が一定数存在します 。
考察: グローバルスタンダードでは、意思決定の速さが企業の競争力と直結しています。面接回数の削減や連絡の迅速化、そして「何を達成すれば昇給・昇進するのか」という基準の明確化が、優秀な人材の流出を防ぐ鍵となります。
採用担当者への提言
外国籍人材を採用・定着させるためには、以下の3つのポイントを意識しましょう。
キャリアの可視化: 入社後の5年、10年のイメージを提示する。
柔軟な環境作り: ワークライフバランスの徹底と、英語併用の検討。
スピード感のある選考: 意思決定の遅さは、候補者の熱意を削ぐ最大の要因です。
本件に関するお問い合わせはこちらまで。
注*本調査は、キャリアフライジャパンに登録する外国籍求職者に対して、当社よりアンケートの協力を得て実施したものです。(2026年3月実施)