バイリンガル人材は、グローバル時代を乗り越えるキーパーソンとなる!

株式会社 WeGlobal  代表取締役 周 如意氏

中国出身。12歳で来日、2017年に筑波大学医療科学類を卒業。新卒で大手医療機器メーカーに入社、国内営業を経験。グローバルスタートアップ事業企画を経て2019年シンガポールの日系人材紹介企業へ転職。2021年日本へ戻り、株式会社WeGlobalを創業。
日本を拠点としたグローバル企業と、バイリンガル人材のマッチングを行う。

12歳で来日。大学、就職を経てグローバルビジネスへ挑戦

キャリアフライ株式会社 羽二生知美(以下羽二生):本日は、WeGlobal代表周 如意さんにお話をお伺いします。

We Global CEO 周 如意氏(以下周氏):よろしくお願いいたします。

羽二生:周さんは海外ご出身のリケジョ(理系×女性)でいらっしゃいます!まさにキャリアフライが応援している求職者からすると、ロールモデルのお一人です。
まず、これまでのご経験を教えていただけますか?

周氏:はい。私は中国出身ですが、12歳の時に来日しました。当時、旅行に行くような気持ちで来日したのですが、蓋を開けてみればそのまま日本に住むことになっていました。

羽二生:心の準備のないままの来日だったのですね。

周氏:そうです。日本語の勉強を何もせずに来日しました。日本の公立中学校に、「あいうえお」もわからないまま入学しました。通っていた公立学校は当時、そこまで外国籍の生徒に対するサポートがなく、苦労したことも多くありました。
反対に、日本国籍の生徒と同じ扱いをしてもらえていたからこそ、言葉は日本語ネイティブのように話せるようになったと感じています。

羽二生:言語能力は環境に大きく左右されます。それにしてもポジティブな考え方です。ちなみに母語である中国語力は保たれているのですか?

周氏:中国語は来日前までのレベルで止まっています。高等教育は中国で受けていないので、中国語でのビジネスやよりフォーマルな言葉遣いはむしろコンプレックスに感じています。

羽二生:今はビジネスで英語も利用されていますが、英語はどのように習得されたのですか?

周氏:英語は日本で高校の授業からスタートしました。大学時代は語学にも興味があり、集中して独学しました。2019年にご縁があり、シンガポールで1年3ヶ月ほど仕事をする経験を経てブラッシュアップすることができました。

羽二生:大学の本専攻ではどのようなことを学ばれたのですか?

周氏:大学は筑波大学でメディカルサイエンスを専攻しました。研究、臨床、実験などに明け暮れ、マウスと向き合う毎日でした。所謂大学生の生活とはかけ離れていたと思います。
卒業後、医療機器メーカーのテルモ株式会社に入社しました。医療系のバックグラウンドを活かし、グローバルで活躍できる機会があればと思い選びました。
ですが、総合職での入社だったため、結果として国内事業に配属となりました。国内のお医者様に医療機器を勧めるお仕事です。同社での仕事を楽しみつつ、やはりグローバルに活躍したいという思いが募り退職しました。

羽二生:その後シンガポールへ行かれたのですか?

周氏:いえ、実はその際ご縁があり、大阪で民泊系のスタートアップで事業開発などを経験しました。10名程度の小規模企業でしたが、アジアを中心とした国々から人材が集まる国際色豊かなチームでした。ベトナムに多言語コールセンターを構えており、国を越えた仕事ができました。
環境としてはとても働きやすかったことを覚えています。

羽二生:どんなところに働きやすさを感じたのでしょうか。

周氏:様々なバックグラウンドの方々と、意見を交換しながら、クリエイティブな仕事を、スピード感を持ち進められる点です。Wantedlyを通じて、このポジションに出会いました。カジュアル面談の時から、話しやすい雰囲気が印象的でした。

スタートアップ企業と同時に、人材系企業からもオファーをいただいていました。悩んだ末、スタートアップへの挑戦を選びました。
人材業界も志望していた理由は、単純に私自身が人と話すことや、キャリアや考え方を知ることが好きであること。また、キャリアに対する考え方と、実際の業務とのギャップに悩んだ自身の経験から、興味を持っていました。

羽二生:その後、シンガポールで今の仕事に通ずるウィルグループのシンガポール子会社Good Job Creations (Singapore) に就職されました。これはどのような出会いだったのでしょうか?

周氏:友人の紹介です。海外で働くことを軸に、インターネットなど様々なツールを活用して転職活動を行いました。その時、シンガポールで働いていた友人の紹介がきっかけとなりました。
シンガポールは世界中から優秀な人材が集まり、英語が使え且つ日本や中国との時差も少ない場所、さらには、中華圏の文化が根付いています。私にとっては総合的に最高な場所です。

羽二生:シンガポールでの就業経験を詳しく教えてください。

周氏:日系企業の採用支援が7割を占める紹介会社です。そのためチームは、日本語を話せる人材が集まる組織でした。ご支援する求職者の方々は、シンガポール人で、日本留学経験者などの日本語堪能な方や、マレーシアやタイなどの周辺国にいる日本語話者で、シンガポールでの就業を希望する方々が中心でした。

人材紹介を経験して、おもしろいビジネスだと感じました。リソースの的確なマッチングは、とても大切です。世界は良いもの、チャンス、優秀な人材に溢れています。今は、各リソースが異なる場所にあるとしても、それぞれを正しくマッチングする、整合していく仕事はとても必要だと感じましたし、今でも大事だと思っています。

慣習や事例にとらわれず、自分のキャリアを切り拓く

周氏:シンガポールで数年経験をした結果、一周回って日本の良さに気がつきました。やはり日本は暮らしやすい国です。仕事の仕方を自分でコントロールでき、パソコン一台でどこでも働ける状態なのであれば、日本で仕事をしてみようと思いました。また、数社経験をし、そろそろ自分でチャレンジしたいと思ったタイミングでもありました。

羽二生:起業前提での日本帰国でした。

周氏:学生の頃から、就職したとしてもずっと会社員を続けるイメージはなかったです。30歳ぐらいまでには、一度自分でビジネスをしたいと考えていました。
中国を筆頭に私が知る国々では、起業は珍しいことではありません。また起業に年齢も性別も関係ないと考えています。
人材紹介の文脈で言うと、私自身の履歴書は、決して綺麗ではないと思います。ただ、自身が目指す目的やゴールに向かい、制限なく色々と自身でやってみようという軸は常に持っています。

日本ではあまり事例がないからか、年齢や性別も相まって、起業したことを驚かれることが多々あります。私が後輩たちの良いロールモデルとして、元気や希望、人生の選択肢を与えたいと思っています。

羽二生:起業するにあたって、人材紹介事業を選んだ理由は?

周氏:日本へ帰国した当初、フリーランスとして様々な仕事を試してみました。そんな中、Linkedinで様々な方から採用のプロジェクトを手伝ってほしい、人が欲しいという企業のニーズと、仕事を探したいが探し方がわからないという求職者からのメッセージを受け取る経験がありました。
そこから、ただの条件マッチングではなく、本当のリソースマッチングができたら良いと考え、人材介をビジネスにしました。

羽二生:なるほど、自身のご経験から課題を感じていたのですね。ちなみに、2021年11月に起業されて、そろそろ1年となります。会社のご状況はどうですか?

周氏:立ち上げてから、様々な企業から声をかけていただいています。提案の幅が広がっていると感じています。中国、シンガポール、アメリカなどの外資系企業が割合としては多いです。また日本のベンチャー企業でグローバル展開していきたい企業様からも多様性のあるバイリンガル人材採用のニーズが上がっています。候補者の特徴は、バイリンガル人材です。日英だけでなく中国語ができる候補者もいます。言語力があるだけではなく、何かしらの専門スキルを併せ持つ方々を特にご支援しています。

バイリンガル人材のコミュニティである、Global Career Community (GCC)も立ち上げました。6月の立ち上げから4ヶ月で350名のメンバーに参加いただいています。
今後も、バイリンガル人材の輪を広げていきたいです。

社内の状況においては、私一人がフルタイムで仕事をしています。業務委託や副業など、自由な形で関わってくださる方々が複数人いて、楽しく伸び伸びと働いています。

今後については、正直なところ、今の紹介ビジネスで大きな組織にしようとは考えていません。あくまでも少数精鋭で、クオリティの高いマッチングを重ねていきたいです。もしこれからどんどん案件が増えてきたら、徐々にニーズに合わせてチームを変化させていく予定です。

弊社のビジョンは、「Be Global, Be Yourself」です。弊社に関わる一人一人が、場所や国にとらわれず、自分らしくキャリアの選択肢を広げ、選び、キャリアフライできるような企業になれたらいいなと思っています。

グローバルで戦う企業と、日本が大好きなバイリンガル人材を丁寧に繋ぐ

羽二生:キャリアフライを使っていただきありがとうございます!笑
クライアント企業と求職者、それぞれの課題はどんなところにありますか?

周氏:外資系企業が持つ採用課題はいくつかありますが、日本企業の多くと同じく母集団形成がまず挙げられます。
特に外資系企業は、日本の採用マーケットをあまり理解していないことが多いです。バイリンガル人材で専門スキルがあるなんて、なかなかいない人材です。それに気がつかないことがあります。また、日本の採用コストが高い上、一度雇用するとやめさせることができないことも、リスクに感じています。
例えばシンガポールでは、評価されなければ解雇は当たり前。10年以上1社に勤めるなんてとても珍しいケースです。採用コストと雇用リスクのバランスを考える必要があります。

バイリンガル求職者の課題として、求人の少なさが挙げられます。活躍できる求人数、と言う意味です。オープンに意見交換ができるようなカルチャーの企業、語学力などの強みを活かせる求人がまだまだ少ないです。そのため、日本での就職活動に窮屈さを感じる方は一定数います。

羽二生;なるほど。それぞれのニーズを、ミスマッチがないよう丁寧に埋めていく役割がWeGlobalなのですね。様々な国や企業の採用を見ている周さんからすると、日本企業の今後の課題をどのように考えていますか?

周氏:言語、特に英語への適応です。ITが進む今、IT基礎は英語で表現されます。中国でも、英語を共通言語としている企業が増えてきています。コロナにより世界と物理的距離が生まれる中、日本語が壁となり、本来世界と安易に繋がることができるITで、繋がれていない状況が起きています。日本企業は日本語の情報しか取れない、日本語でしか発信しなければ海外の人はその情報を得ることができません。日本に興味を持っている方は海外にたくさんいます。でも日本語だけなので、情報にアクセスできません。

言葉の壁だけでなく、商習慣や人とのコミュニケーション方法なども特有なものを持っています。私は、日本の誠実さや真面目さがとても好きです。ただ、スピードや考え方はグローバルの波に乗る必要があると考えます。
新しいことにチャレンジしたり、若い人たちの意見を仰いだりする「アジャイル」の考え方を、もっと取り入れるべきです。

かつては、日本の製造業が世界のトップでした。変化よりも改善の意識が強いです。丁寧な物作りが世界中で評価されて来ましたが、今日売れた製品が明日は売れない時代です。日本の良さを大切にしながらも、スピードの変化に気づき適応する力が求められます。

この課題を解決する救世主こそが、バイリンガル人材です。彼らは、まず言語の部分で世界との架け橋となります。またカルチャーについても、彼らのアイディアや意見を少しずつ取り入れることで、多文化共生ができる企業風土を形成することができます。

羽二生:その救世主たちが、日本での就業を希望してくれる理由は?

周氏:日本が好きだからです。日本の暮らし、文化、観光地、食べ物など、日本で暮らすこと自体に興味がある方がほとんどです。給与に関しては、昨今ニュースでもよく取り上げられていますが、アジア各国と比較しても水準がますます低くなっています。
そんな中でも日本語を勉強し、日本で仕事をしたいと考えているのは、日本が好きという強い思いです。
そんな方々が、一人でも活躍できるよう、今後も丁寧なマッチングを進めていきたいです。

日本企業は、世界から選ばれる工夫と努力を!

羽二生:ありがとうございます。最後に、採用企業、バイリンガル人材の皆様に、それぞれメッセージをお願いします。

周氏:企業に向けて、世界中から選ばれる努力をしてください。そして、そのために架け橋となれるバイリンガル人材を大切にしてほしいです。

バイリンガル人材や外国籍人材が、必ずしも優秀であるとは言いません。ただ、単純計算をして、日本の人口が1億人、世界が80億人とすると、良い人材を取ろうとしたら必然的に80億人から採用する方が可能性が高まります。
そうなると、世界中の企業が採用競合となります。そこでも選ばれる企業になる工夫をしていただきたいです。
最近、Amazon内部の方とお話しをする機会がありましたが、Amazonでさえ採用に課題があると聞きました。一昔前は何もしなくても優秀な人材から応募があったそうですが、今はリクルーターが一人一人声をかけて回ることで、やっと人材を確保しているようです。

世界的有名企業でさえ、選ばれるために努力をしています。日本企業がしない理由はないのではないでしょうか?たとえ外国籍人材を採用しないというポリシーをお持ちであるとしても、Z世代をはじめ若い世代はどんどんグローバル視点を持ち社会へ出ています。国内にいても、グローバル水準での採用は必須となると考えます。

とはいえ、グローバルな採用市場で戦えるほどの変化を、すぐに起こすことはなかなか難しさがあるでしょう。そこで、日本企業とグローバル企業の両方の文化を理解したバイリンガル人材が活躍できる場を作ってほしいです。それにより、企業が次のステージへ向かうことができると考えます。

バイリンガルの方々に対しては、ぜひご自身の強みを理解し、高める選択をして欲しいです。日本語は世界的に見て話者が少なく、一国で使われる言語です。その一国がGDP世界トップクラスの国、日本です。そのため、日本語が話せること自体に優位性があります。
日本語・英語、そして何かしらの専門性を持つことが、スキルの掛け合わせとなり活躍することができます。

羽二生:そうですね。もしバイリンガル人材や、自身のスキルの活かし方に迷うことがあれば、We Globalに相談すれば良いのですね!
 
周氏:はい!弊社は将来的に、バイリンガル人材とグローバルビジネスを支援することで日本と世界を繋げるベストプラットフォーマーになりたいと思っています。
正社員の人材紹介に限らず、世界中の仲間との交流/副業/複業/起業などバイリンガル人材がいろんな形で日本と世界を繋げる活躍ができるようにサポートしていきたいです。また企業においては、外資系の日本進出や日本企業の海外進出のベストパートナーになりたいです。
それこそWeGlobalは世界中にコミュニティを作ることも検討しています。バイリンガル人材は世界中に存在するため、各地での交流する機会を作りたいです。

羽二生:それは楽しそうです!これからも、個人が自由なキャリアを描けるよう、日本企業がグローバルで戦える企業になるためにサポートをお願いします。キャリアフライは理系人材の分野で、一緒にその実現を推進していきます。
本日は貴重なお話をありがとうございました!