英語が不得意だったからこそ習得できたビジネス英会話
CareerFly 羽二生知美(以下、羽二生):本日は、ワンナップ英会話を運営するジェイ・マックス株式会社 代表取締役海渡寛記さんに、外国籍社員と共に成功する秘訣をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
ジェイ・マックス株式会社 代表取締役海渡寛記氏(以下、海渡氏):よろしくお願いします。
羽二生 :起業前は電機メーカーにお勤めでした。英会話スクールとは全く違う業界ですが、どのような経緯で貴社を設立されたのですか?
海渡氏 :電機メーカーで商品企画をしていました。新入社員時のスピーチでは、社長になる!と宣言し、最後までその夢は持ち奮闘しましたが、残念ながらソニーに買収されてしまいました。買収された企業側の社員からソニー本体の社長になることは現実的ではなかったので、夢が叶わないならと起業を決めました。
羽二生 :当時はまだ、事業内容は決めていなかったのですか?
海渡氏 :そうなんです。ただ、何ができるかと考えた時、英語しかなかった。なので英語教室を開きました。
羽二生 :英語はもともとお得意だったのですか?
海渡氏 :いえ、もともと大の苦手でした。留学などの海外経験もありませんが、前職でたまたま海外とのやり取りやプレゼンなどの機会がありました。最初は手も足も出ず、悔しい思いをしました。それがきっかけで勉強を始めました。
ビジネス英会話は、場面に合わせた最小限の単語量で対応することができます。
実際の場面に合った勉強を独学で進めました。とはいえ、英語が完璧になることはありません。ビジネス力を最大限に活用し、英語力をカバーしました。例えば、なるべくプレゼンはビジュアルで伝える、わからなかったら聞き返す、質問されたらメールで答える、などです。
英語が使えなかったからこそ、最小限の英語とその他持ち合わせていたスキルで乗り切ることができました。英語が話せると、英語に頼りきってしまいますので。
顧客満足に全力で応える
羽二生 :ご自身が苦手だったからこそ、克服の仕方がわかりますね。起業したばかりのときは、カリキュラムやテキストは何を活用されましたか?
海渡氏 :全部講師と一緒に作りました。英会話スクールにとって、カリキュラムはラーメン屋でいうとスープの部分です。個性であり、うまみである。だからこそ、こだわって作りました。
英語メソッドの王道は、シチュエーションベースか、グラマー(文法)ベースです。私自身の成功体験から、弊社では、シチュエーションベースのカリキュラムを採用しています。
起業当時は、生徒さんも少なかったので、その人たちのためだけにシチュエーション別のカリキュラムやテキストを作り、それを積み上げてデータベース化し、今は皆さんに使っていただけるようなものにしました。
羽二生 :なるほど。最初の生徒さんにとってとても贅沢なカリキュラムでしたね!それが、貴社が誇る10年連続顧客満足度98%という偉業達成の要因でしょうか?
海渡氏 :要因の一つにはなると思います。それだけではなく、他にも他社と比較しても絶対に満足いただけるような価格設定や、個別対応も進めています。
日本文化理解度を重視した、外国籍社員採用
羽二生 :優秀な講師陣は、顧客満足に直結します。どのような特徴が貴社講師陣にはありますか?
海渡氏 :講師としての経験や資格はもちろんですが、一番は人柄です。生徒さんからの講師への信頼がとても重要になります。定量的ですが、採用時にはとても重要視しています。
羽二生 :採用について、詳しく教えてください。
海渡氏 :弊社の講師は母国語話者であることにこだわっています。「学ぶ」は「真似る」からきていると考えており、ネイティブの仕草や間の取り方も含め、真似る方が、習得が早いです。起業当時は、外国籍採用において、ジャパンタイムズの月曜日に求人広告を出すことが一番効果的でした。それに習い求人広告を出し、100人ほどのエントリーがありました。現在はオンラインで採用活動をしています。
採用基準は、豊富な講師経験が大前提ですが、その他に2点あります。
1つ目は、私が聞き取れるクリアな英語を話せる人。2つ目は、日本の文化を理解してくれる人です。
羽二生 :日本文化への理解は、どのように見極めていますか?
海渡氏 :私は、日本における海外企業を作るというよりは、日本企業のいいところを持った異文化企業を作りたいと考えています。そのために大切にしているポイントは、謙虚さです。
例えば、欧州の方は、初対面でもビジネスでも、Hi!といって握手をするところから始めますよね。そうではなくて、「よろしくお願いします」から会話をスタートできるかをみていました。他にも言動をよく見て、謙虚さのある人かどうかを確かめました。細かいですが、この小さな違和感が、時間が経つにつれて大きくなることを考えると、初期の見極めがとても大切です。
日本企業文化をベースにした、ONE TEAMを作る
羽二生 :現在6校のスクールを運営されています。大所帯の異文化組織をまとめる上で、企業文化をどのように考えていらっしゃいますか?
海渡氏 :現在のチームメンバーは、日本国籍社員、外国籍正社員、業務委託パートナー、そして運営する日本文化スクールのスタッフを含めると120名近くのスタッフがいます。
外国籍社員の有無に関わらず、企業文化づくりはとても大切です。
そして企業文化形成において一番大切なのは、代表自ら主体的に、企業文化を伝えていくことでしょうか。私が目指す企業文化は、日本文化をベースとした、ONE TEAMな文化です。
羽二生 :どのように、企業文化を社員に伝えていますか?
海渡氏 :伝え方は、仕組みと行動の両方を行なっています。
仕組みとしては、チームが縦割りにならないように6校あるスクールを、講師が全員回るようにしています。「〇〇校の先生」という概念がありません。一つのチームですので、会社で起こることはすべて自分事として考えられるようにしています。
また、外国籍社員やスタッフを含めた全員が「おはようございます」と「お先に失礼します」または「お疲れ様でした」を必ず言うと決めています。相手を敬う日本文化の良い所は取り入れたいと考えているからです。
行動の部分では、常に企業理念を発信し続けることをしています。国籍の違う多様な人がいますが、私達は理念に基づいて集まっています。ですので、理念の共有こそが最重要課題です。またチームビルディングの為の施策は数多く実施しています。メッセージを伝える為には対話の総量を上げなければならないので、その一環でもあります。
日本国籍社員も外国籍社員も、納得して仕事ができる環境を作る
羽二生 :外国籍社員と日本国籍社員が混在するチームでは、マネジメントで苦労された点もあるかと思います。どのような点で苦労されて、どのように克服されましたか?
海渡氏 : 当社の場合は、人事評価制度を総合職社員と技能職社員で分けています。
日本国籍社員と外国籍社員という対立軸を作らず、職務内容で制度を変えることで国籍ではない業務内容での区別をしたことは良かったと思っています。
羽二生 :マネジメントにおいて、言語はどのように使い分けていますか?
海渡氏 :日本語と英語の両方を使っています。
とはいえ、最初の頃は言語で苦労したことも多かったです。そこで私を含め日本国籍社員は英語学習に本気で取り組んだ時期もありました。
現在でも弊社の日本国籍社員は、全員TOEIC900点の取得を義務にしていますが、それでも英語では言い回しが難しいときもあります。ただ、弊社の社員は日本での生活が長いので、日本語が話せなくても聞き取りはできるケースが多いです。そのため社内では、日本国籍社員が日本語で話し、外国籍社員が英語で話し、会話が成り立っている光景をよく見ます。(笑)
羽二生 :ハイクオリティなコミュニケーションですね!
貴社で働く外国籍社員の方々は、貴社から多くのことを学んでいると思うのですが、反対に海渡さんが外国籍社員から学んだことはありますか?
海渡氏 :一つ挙げるとすると、「リスペクトする」という感覚でしょうか。
羽二生 :よく欧米の方から聞く言葉のイメージがあります。
海渡氏 :私もよく「リスペクト」という言葉を彼らから聞くのですが、以前はあまり感覚的に理解できていませんでした。辞書を引くと、「尊敬する」と出てくるわけですが、尊敬は相手の行動に対して起こる感情です。だから出会ったばかりでまだ何も知らない人に対してリスペクトをするという事に違和感を持っていました。
しかし、外国籍社員と働きわかった事はリスペクトは尊敬ではなく敬意であるということです。敬意は誰にでもどんな時でも払うことができます。行動ベースではなく、存在やあり方に対しても敬意を払うことができるからです。それがわかってから、私は外国籍社員へ日本語で話す際は、正しく綺麗な言葉遣いをするようにしています。小さなことですが敬意を持って接すると、言葉遣いも変わるものだなと思っています。
共にキャリアフライするためのキャリアパス形成は必須!
羽二生 :なるほど。他にも、感謝を行事で伝えたり、制度を考えたりと、相手に敬意を払った行動は他にもすでにたくさんお伺いしてきたと思います。きっと社員の方々にも伝わっていますね。外国籍社員と共に事業を進める上で、現在課題に感じられていることは何ですか?
海渡氏 :マネジメントポジションを作ることです。すでに講師をまとめたり、採用をするような社員は外国籍社員からも出ていますが、それよりも上のポジションを作っていかないと、彼らのキャリアを社内で作ることができません。今後も長く一緒に働くために、外国籍社員のマネジメントポジションを作ることは必須です。
羽二生 :常に社員の方々に、今後の目標や進む方向を伝えていらっしゃいますが、どのようなキャリアフライ (事業展開)をお考えですか?
海渡氏 :コミュニティを作りたいと思っています。主体的に学ぶ人同士が繋がり、学び続けられるような環境です。スクールの次のカタチはコミュニティだと思うんです。私は「教える」よりも「学ぶ」の方がパワフルだと考えていますので、受講生が主体的に学ぶ“アクティブラーニング”を実現するコミュニティを作っていきたいですね。
羽二生 :言語は継続が一番難しいですよね。とても素敵な事業展開だと思います。
最後に、外国籍人材雇用にチャレンジしたい経営者の皆様に、メッセージをお願いします!
海渡氏 :採用側の本気度次第で、外国籍人材採用が成功するかどうかが決まります。
本気でやれば、課題があっても解決することができるし、人材の幅は間違いなく広がります。
これまでもたくさんの外国籍の方と出会って、いい人にもたくさん出会ってきました。
そんな人たちと働けることは幸せなことです。ぜひ、本気で向き合ってみてください。
羽二生 :力強いメッセージをありがとうございました!
オンラインコミュニティもとても楽しみにしています!
本日はありがとうございました。
ジェイ・マックス株式会社代表取締役海渡寛記氏(左)とCareerFly株式会社羽二生(右)
ジェイ・マックス株式会社 代表取締役海渡寛記氏 にインタビュー
中央大学を卒業後、大手電機メーカーへ入社。グローバルで商品企画を経験。2002年よりワンナップ英会話を立ち上げ、現在は首都圏に6校を展開。2007年より英国風パブを運営する株式会社ハブと異文化交流企画「FEEL ENGLISH!」を展開。2015年、和の総合学院HiSUi TOKYOの運営を開始。昨今英語学習者向けのオンラインサロンを開始し、常に時代に合わせたサービスを展開している。